バージョン2.0のリリース後に諸事情で一度は他社に譲渡しておりました「ちゃうちゃう!」が、7月1日から従来どおりサグラーシェでの取り扱いに、戻りました。
ベクターでの登録を元に戻すなど、細かい作業に時間がかかっておりましたが、現在はほぼ元どおりになっております。
1998年7月にFindDifferencesという名称で英語専用の比較ツールとしてリリースし、2002年には日本語にも対応して、はや19年目に入ります。
バージョン2.0のリリース後に諸事情で一度は他社に譲渡しておりました「ちゃうちゃう!」が、7月1日から従来どおりサグラーシェでの取り扱いに、戻りました。
ベクターでの登録を元に戻すなど、細かい作業に時間がかかっておりましたが、現在はほぼ元どおりになっております。
1998年7月にFindDifferencesという名称で英語専用の比較ツールとしてリリースし、2002年には日本語にも対応して、はや19年目に入ります。
着物や豆腐など、多くの英英辞典にローマ字で英単語として掲載のある日本語は、いくつかあります。
そして、「鳥居」もそのひとつになりつつあるということに、気づきました。
今のところ確認できているのはMerriam Webster だけですが、ウェブスターに採録されるくらいですから、海外でも鳥居の認知度が高まっていることを示しているのだろうと思います。
定義は、次のとおりです。
a Japanese gateway of light construction commonly built at the approach to a Shinto shrine
厳島神社が20年以上も前に世界遺産に登録されていますし、昨年の伊勢志摩サミットでは伊勢神宮も報道されましたから、toriiが英英の見出し語になってもおかしくないのかもしれません。
興味深いのが、どうやら単複同形らしいということ。
ウェブスターでは、複数形も「torii」とあります。
shrineやtempleは通常の可算名詞なのに、なぜ鳥居は単複同形なのでしょうね。
余談ですが、鳥居を調べたきっかけは、神社仏閣にあります。
神社とお寺を神社仏閣と呼びますが、栃木県で世界遺産になっているのは、「日光の社寺」。
江戸時代のお奉行様は、「寺社」奉行。
ほかに、寺社仏閣とか社寺仏閣とか呼ぶ人もいます。
この2つについては個人的には不自然な印象を否めませんが、言葉としては存在します。
これらの語を英訳するとしたら、どうするかと考えたことが発端でした。
そして何気なく明細書を検索してみたところ、神社仏閣もデジタル時代・・・御札にも特許出願が・・・と、驚きの連続です。
【請求項1】 神社仏閣のコンピュータシステムと公衆通信回線を介して複数の情報端末を接続し、この情報端末から前記公衆通信回線を介して前記神社仏閣にアクセスし、前記コンピュータシステムは前記情報端末からの依頼事項を出力する手段を有し、この出力結果に基づき前記神社仏閣にて前記依頼事項に対応する宗教行為が実行されることを特徴とする神社仏閣サービスシステム。 (特開2003-150728) 【請求項1】 神社仏閣において祈願の受付に必要な祈願情報と祈願に必要な祈願者情報と神社仏閣でそれ等を識別するために付与した祈願者IDとの取り込みを行ない、受付登録を行う受付登録部と・・・(以下略) (特開2005-085098) 【請求項5】 寺社仏閣の木製構造材に張られる御札であって、表面に表示を施した基材とその裏面に設けた貼着層とを有しており、前記基材又は粘着層若しくは両方を水溶性又は吸水性として、水溶性又は吸水性の部分に防蟻剤又は防腐剤を含ませている、御札。 (特開2016-106580) |
それも、個人発明家の発明ではなく、大手企業の出願もそれなりに混じっています。
こうして感動しつつ調べているうちに、鳥居に至りました(笑)。
鳥居は鳥居で興味深い出願がいくつもあり、訳すなら海外メディア同様に「torii gate」なのかと考えつつ、試しに辞書を引いてみたら出てきたというわけです。
関東甲信越英語教育学会の月例研究会です。
学会員以外でも、申し込み不要で無料で参加できます。
小学校の英語なんて翻訳業界には関係ない・・・・・・とはかぎらず、10年後、15年後には大きく影響してくるかもしれません。
以下、学会のウェブサイトから転記します。
日時:2017年10月14日(土)16:00-18:00 場所:お茶の水女子大学附属中学校 講師:蜂谷 太朗 先生(埼玉県川口市立柳崎小学校) 内容:「英語専門ではない小学校教員ができること」 概要:小学校英語教科化に向けて、全国的に、急ピッチで準備が進んでいますが、課題は山積しています。特に、教員の英語力と指導力の向上が急務となっています。やはり、英語の専門家ではない小学校教員が指導することに懸念を抱く教員自身も少なくありません。勤務校を中心に、理科と体育の専門である講師がどのように教科化に向けての準備をしているのかを、(1) 小学校の現場が抱えている課題、(2) 研修の場で小学校教員が学ぶこと、(3) 講師自身が行なっている英語活動並びに学級・授業づくりの活動を中心に情報提供をします。また、今後一教師がどのように英語力や指導力を向上できるのかを参加者の皆さんと一緒に考えたいと思います。 出典:http://www.kate-j.sakura.ne.jp/ |
私は以前、市のボランティアとして小学校5年生と6年生の英語の授業を2年ほどサポートしたことがあります。
教育行政によって違いはあるかもしれませんが、私が手伝ったときは、年度ごとに違うネイティブ講師が派遣され、おふたりとも市から「原則として日本語を使うな」と指導されていました。
授業はもとより、職員室での授業プランの組み立ても、英語です。
現場の先生方は、英語に堪能な方々ばかりではありませんから、ボランティアの保護者を「通訳」として介して何とか授業をしていたような状態でした。
小さく試してうまくいかない(=中学高校で成果が出ていない)ものを、規模を大きくしてうまくいくと考える所轄官庁の施策に現場が振り回されている印象を拭えなかった2年間です。
小学校の英語が原因で、中学にあがる頃には英語嫌いになった子が急増したことも、特徴的でした。
現在は、当時より改善されているとは思いますが、それでも課題は山積みです。
翻訳業界もレベル低下の一途をたどっているという声がありますし、教育現場の実状を知ることが有効な対策を立てる上で必要になる時代がくる・・・かもしれません。
お時間と興味のある方は、ぜひ。
興和株式会社が9月1日に発表した、「メイクがおちにくいマスク」のリニューアル。
(→プレスリリース (PDF形式))
特許出願中の表示がありますので公報を調べたところ、関連していそうな出願が最低でも3件あることがわかりました。
特開2012-148200 女性用マスク
特開2014-155876 女性用マスク
特開2016-053237 女性用マスクの製造方法
そしてesp@cenetで英文抄録を確認したところ、上の2つは発明の名称が「mask for female」、3つ目は「manufacturing method of mask for female」となっています。
英語のmaskは違うものを想起させるからか、日常英語ではflu mask、gauze mask、surgical maskなど複合語で使うことが多いように感じますが、特許翻訳では、安易にこれらの訳を使うことはできません。
だから、そこはひとまず脇によけておきます。
問題は、female。
日本語の「女性」という語は、それだけで通常は「人間」の前提で理解しますよね。
ところが英語のfemaleは、人間の女性はもとより、動物のメス、さらには植物の雌株にも使われます。
どう考えても、日本語と英語で語義の範囲が違います。
何の予備知識もなく「mask for female」とだけ言われたら、私ならたぶん、考えてしまうだろうなと。
少なくとも、上にあげた商品のようなマスクを瞬時にイメージは・・・・できないですね。
もちろん明細書全体を読めば、文脈から一意に理解できる可能性は高いでしょう。
でも、それはそれ。これはこれ。
別案としてwomanなら人間だけになりますが、これだと子どもを含まず、girlは大人を含まず・・・。
そうすると、日本語の「女性」に最も近い訳は?
新聞などの海外メディアで、「female person」という表現を、ときどき見かけます。
文の内容にもよりますが、これならわりと使えそうです。
男性しかりで、「女性」「男性」という語は、簡単なようで意外と訳が難しいのかもしれませんね。
遺伝の法則の「優性」「劣性」は使いません――。誤解や偏見につながりかねなかったり、分かりにくかったりする用語を、日本遺伝学会が改訂した。用語集としてまとめ、今月中旬、一般向けに発売する。 |
上記は、本日9月7日付け朝日新聞(東京版)朝刊34面に掲載された記事の冒頭です。
デジタル版でも、全文を読むことができます。
(→「優性」「劣性」遺伝、使いません 学会が用語改訂:朝日新聞デジタル)
記事には、「優性」「劣性」が「顕性」「潜性」と言い換えられる理由が説明されています。
「変異」が「多様性」、「色覚異常」「色盲」が「色覚多様性」になるなど、他にも変更があるようです。
何年か前にも、日本遺伝学会が頻出用語を大きく変更して、結果的に市販の辞書に訳語のばらつきが生じたことがありました。
今回は、教科書の用語も変更するよう、学会が文科省に要望を出すとのこと。
こうなると、専門辞書も紙版は改訂を強いられることになる可能性がありますが、インターネット上には、古い(?)表現が山のように残っています。
学会が用語を変更し、教科書にも反映させたからといって、そう簡単に世の中が塗り替えられるとは思えません。
検索エンジン、論文データベース、書籍・雑誌の記事検索、新聞検索・・・・・
変更の事実すら知らないまま、デジタル手段での検索によって翻訳文に古い表現を使う人も絶対に出てくるでしょう。
それ以前の問題として、学会と教科書で使う言葉が変更になるとして、翻訳文にそれをどこまでどう反映させる必要があるのかないのか・・・・。
「翻訳者として」考えなければならないことは、山積みです。
この用語変更が今後どうなっていくのか、目を離せませんね。
つい数日前、9月5日にロッテが「記憶力を維持するガム」という商品をリリースしました。
新聞に大きく広告が載っていましたから、ご覧になった方も多いでしょう。
![]() | ロッテ 歯につきにくいガム板(記憶力を維持するタイプ) 9枚×15個 2,268円 Amazon |
これは、イチョウ葉フラボノイド配糖体とイチョウ葉テルペンラクトンを含む製品。
なかなか思い切った商品を出してきたものだと思って広告を読みました。
すると・・・
本日の健康産業新聞には、まったく別会社、別食品で
【健康産業新聞】プラズマローゲンで「学習記憶能力増強剤」特許取得、丸大食品
というヘッドラインが。
こちらは、特開2016-210696(発明の名称:学習記憶能力増強剤)に対応するもので、九州大学と丸大食品の共願です。
成分は、プラズマローゲン。
土曜日で審査経過を取得できていないので、請求項をどの程度補正しているのかいないのかは、現時点では未確認です。
ただ、2015年の4月に出願され、わずか2年半で特許査定になっていますから、特許庁とそれほど多くのやり取りはなされていないと思います。
おまけに、出願時の請求項1は、わずか1行。
プラズマローゲンを含む、学習記憶能力増強剤。
これだけです。
請求項2で「生体組織から抽出されたプラズマローゲン」に限定し、請求項3では、生体組織が「鳥組織」であるとしています。
私はよく、こういった報道記事をきっかけに自分の英訳を考えます。
「鳥」をいかに英訳するか、「学習記憶能力」をいかに英訳するか、といった感じです。
鳥だからbirdでしょ、なんていう単純な話でよいかどうかは、わかりませんし。
たとえ問題ないとしても、他に「鳥」を表す周辺語は何があるかと考えてみたり。
すぐに思いつくのはavianですね。
あるいは、birdと一緒に使われる動詞を考えてみるとか。
「鳥」といえば、「飛ぶ」「羽ばたく」「(枝などに)止まる」「鳴く」「(エサを)つつく」などがありますね。
これを英語にしたら?
a bird flies、a bird flaps its wings、a bird perches・・・・・
いくらでも遊べますね(笑)。
余談ですが、プラズマローゲンについては、食品化学新聞社の『Food Stype 21』という雑誌の本年6月号で機能性食品の特集が組まれたときに、3記事まとめて出ています。
そのうち1本は、丸大食品の「鶏由来プラズマローゲンの機能性について」。
残りは、三生医薬の「ホヤ由来プラズマローゲンの開発」と、ピーアンドエスの「高純度ホタテ由来プラズマローゲンの開発と機能性 」です。
丸大食品の記事では、アルツハイマーとの関連性が示されています。
調べてみたところ、他にも昨年秋に『食品と開発』という学術誌に、「認知・ストレス・睡眠改善機能をもつ食品開発 食品素材としてのプラズマローゲンの開発」という記事が出ていました。
著者は、上記の特許出願の発明者のうちの一人です。
これはこれで、読めば英語を考える題材はいくらでも転がっているだろうと思います。
現代は本当に便利な時代になりましたね。
ひとつの記事をきっかけに、好きなだけ資料を増やしていくくことができるのですから。
語学学習や翻訳の際に、特定の語が何を示すのか確認する目的で、Google画像検索を使う人は多いと思います。
私自身も、時々利用しています。
ところが・・・
ここ1~2年ほどで、精度が極端に落ちてきているのを痛感するようになりました。
精度が落ちているというのは、語弊があるかもしれませんね。
語学学習者や翻訳者にとっては、工夫が必要になっているというほうが、正しいかもしれません。
具体的には、次のような現象が頻発しています。
画像検索してヒットした画像を含む(もとの)ウェブページに、
・検索対象の語が1つも含まれていない
・検索対象の語に1:1で対応すると思われる、中国語や韓国語など外国語の単語のみ含まれる
・検索対象の語は含まれていないが、意味的に近いと思われる別の語が多く含まれる
・検索対象の語がスペルミスで、正しいスペルだと自動予測されたと思われる語が含まれる
などの現象が発生します。
ときには、画像検索した結果を順に確認しても、検索語を含むページに全く出会えないことも。
以前、Googleの検索結果には、実在しないコンテンツや機械翻訳による用語が相当数で混じっていることを、実例とともに示しました。
【参考】
加えて、最近はGoogle翻訳も、原文のスペルミスがあった場合に正しい語を「予測して」翻訳結果が出力されます。
おそらく画像検索の問題は、こうした機能が充実していったことの裏返しでしょう。
とにかく、検索したキーワード「そのものだけを」ヒットさせることが、難しくなってきています。
通常のウェブ検索でも、検索語ではなく類語だけを含むコンテンツがヒットすることが増えましたが、それでもこちらは文章を読めば気づくでしょう。
ところが画像検索は、もとのページを確認しないことのほうが多く、実は「違うもの」が混在していても気づきにくい。
画像検索を使う場合、「おおざっぱに」イメージをつかめれば良いときは別にして、何かの細かい違いを知りたいときなどは、検索結果を眺めて終わり・・・というわけにはいかなくなりそうです。
キーワードのほうを工夫するか、あるいは個々にコンテンツを確認するか、何らかの対処が必要な時代になってきたのかもしれませんね。
日本では、なぜかマザー・テレサとともに語り継がれている、「愛情の反対は憎しみではなく、無関心」という言葉。
マザーのほうは根拠がはっきりしないのですが、作家のエリ・ヴィーゼルの言葉であれば、数々の洋書や報道記事に確認できます。
The opposite of love is not hate, it's indifference. The opposite of art is not ugliness, it's indifference. The opposite of faith is not heresy, it's indifference. And the opposite of life is not death, it's indifference. Because of indifference, one dies before one actually dies. To be in the window and watch people being sent to concentration camps or being attacked in the street and do nothing, that's being dead. By Elie Wiesel, US News & World Report (27 October 1986) |
私はよく、この「愛情の反対は憎しみではない」と、スポーツなど人々の趣味のものを重ねて考えます。
たとえば、野球の阪神ファンもアンチ阪神も、阪神に関心があるという意味では同じこと。
SMAPファンもアンチSMAPも、SMAPに関心があるという意味では、同じこと。
単に、そこに向けられる感情の種類が、違うだけ。
関心が「ある」の反対は、関心が「ない」。
だから、愛情の反対は憎しみではなく、無関心になり得るのですよね。
ところで・・・・
私事ではありますが、実はここ1か月半ほど、かつて経験がないほどの忙しさになっています。
翻訳者になって25年半、今のような状態は覚えているかぎりはじめてです。
当然、従来と同じやり方をしていたら、自分の好きなことを楽しむ時間なんて、どこにもありません。
勉強する時間も、とれません。
それどころか、放っておいたら、ストレスと疲れで品質が落ちる可能性も容易に予測できます。
何か対処をしなければ。
どう対処するかを考えていたときに、思ったことがありました。
たとえば、仕事を「頑張って、する」こと。
若い頃の私は、このタイプでした。少しくらい無理をしてでも、家事も育児も仕事も頑張ってしまう。
でも、頑張りすぎると、心も身体も疲れます。
そういうことが長く続くと、周囲から、あまり「頑張らないように」しないといけないよ・・・・と言われることも、よくありました。
そして頑張りすぎないように意識していたことも、ときどきありましたが・・・。
「頑張る」も「頑張りすぎないようにする」も、方向が違うだけ。
結局は、「~する」が入っているのですよね。
頑張らないようにするという、新しい行動(考え;手法)が、存在しているというか。
そんなことを考えていたある日の昼下がりに、ふと、思いました。
重要なのは、頑張りすぎないようにすること「ではなく」、頑張るのを「やめる」ことではないかなと。
少々こじつけ的で荒っぽい言い方ではありますけれど、
良い意味での「無関心」みたいなもの
ですね。
手に持っていたものを、全身の力を抜いて、そのままストンと落とすような感じです。
ここまで思いが至ったとき、ある実験をしてみることにしました。
納期が立て込んで仕事がギュウギュウのとき「ほど」、意識的に、遊びに行く。
頑張りすぎないようにする、のではなく、そもそも頑張るのをやめました。
ただし、守秘義務の問題にならない程度に、仕事は持って出ます。
具体的には、翻訳文の見直しや資料を読むことなど外でもできる作業を昼間に割り当てて、積極的に外に出ました。
美術館や公園などに足を運び、あるいは初めての場所に行って、「ついでに」カフェで仕事をします。
仕事は、あくまで「ついで」です(笑)。
それも、スターバックスやドトールなどのチェーン店ではなく。
自分が最高に良い気分になれそうなカフェだけを、意図的に探して選んでいます。
結果、何が起きたか・・・・
仕事の品質と時間密度が、かなり上がりました。
品質のほうはクライアントからのフィードバック/反応などに反映されましたし、自分でも以前より効率が上がったのを実感でき、なおかつ記憶への定着率も格段によくなったのです。
1件ごとに終わると調べたことの多くを忘れるのが日常だったのに、今は仕事をしながら勉強する形が、成り立ちます。
そもそも自分が最高に快適になれそうな店を選んでいますから、それだけでもストレスが減り、集中力がアップしますし。
相当に仕事が詰まっても、好きなことができないとか勉強する時間がないとかいう問題が、起きない。
好きなことと勉強を「しながら」、同時に仕事をこなせていますので。
学生時代から、友人たちに「ヨーロッパかぶれ」と言われたほど欧州が好きで、特にルネッサンス時代のヨーロッパの貴族には、本当に魅了されます。
だから、そういうアンティークな雰囲気のあるカフェばかり、選びました。BGMは、クラッシック音楽です。
いずれにしろ、愛情の反対は無関心・・・・・からヒントを得て仕事のスタイルを変えたのは、かなりプラスだったようです。
時間がない「から」好きなことが「できない」
ではなく、
時間がない「なら、好きなことも同時に一緒にすればよい」・・・・・・ですね。
物理的なキャパシティの限界もありますから、お断りせざるを得ないときは断っているのですが、しばらくこの方法で続けてみようかなと思っています。
画像は、デ・ラランデ邸という洋館です。
1階の一部が武蔵野茶房というカフェで、2階も見学可能になっています。
(リンク先の360度パノラマビューで店内まで入れます。)
前回からの続きです。
あるときから、仕事が詰まっているときほど意識的に外に出る、ということをしはじめました。
ただ、遊びすぎで納期を守れないとなると、本末転倒。
適度な運動はストレス解消になることがわかっていますが、体力を使いすぎて帰宅後に何もできなくなるというのも困ります。
さらに言えば、移動中の時間もフルに有効利用したい・・・。
そこで、自分の中でルールを決めました。
・自宅から徒歩20分圏内
・自宅のすぐそばにあるバス停から、バス1本で行くことのできる範囲
このどちらかの条件を満たす場所だけにしてみよう、と。
そもそも中世ヨーロッパの貴族を連想させるようなカフェに限定していますし、その上さらに地域限定で、どれだけ続くのか?という疑問も当然のことありました。
鉄道3路線の計7駅にバス1本でアクセスできるとはいえ、条件が厳しすぎるのではないか、と。
条件を満たす場所を探すだけでも、ゲーム感覚ですね。
ところが、「そういうつもりで」探してみると、意外なほど見つかりました。
こんなにあるとは、正直、想定外です。
でもまあ、せっかくなので順番に試しているうちに、心底痛感していることがあります。
身体を動かす+新しい刺激が入る
という、これが思った以上に効果を発揮しているのだろうなと。
忙しいときほど遊ぶというそれだけで、楽しみながら1日を48時間にできたような気分です。
いってみれば、仕事をする環境を日々変えているだけなのと同じようなものなのに。
たとえば前回の最後に画像をあげたデ・ラランデ邸。
江戸東京たてもの園という施設の中なのですが、そこまで行く途中、満開のコスモス畑を通りました。
たぶん昨日の台風で、もう一輪も咲いていないとは思いますが、期間限定の美に触れました。
そして今日は今日で、本葛コーヒーという「食べるコーヒー」に出会って、一目惚れ。
コーヒーとユズと生クリームと、そして吉野の葛。
ユズは皮を細く切ったものかと思いきや、途中で溶けてクリームに混ざり、絶妙の味に。
仕事をしながらで、最後まで飲みきる(食べきる?)のに時間がかかっただけなのですが、結果的に良いものを経験できた感じです。
不思議な組み合わせではありますけれど、おいしかった・・・。
こういう「ちょっとした感動」の積み重ねと移動に伴う適度な運動が、自宅では実現できないほど仕事の効率と品質、学習効果を高めているのだろうと思います。
ちなみにカフェで過ごす時間は、ほとんどを見直しと資料読みにあてています。
最も単調で退屈なだけの作業が、楽しい時間になっている、ということですね。
昼間の時間のこういう使い方はフリーランスならではの側面がありますけれど、通勤をなさっている方も、自宅の最寄り駅からオフィスまでの範囲に限定して自分の心地良い場所を開拓するとか、応用はできるだろうと思います。
もしかしたら、オフィスで残業より、成果があがるかもしれません(笑)。
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愛情の反対は無関心・・・と翻訳品質
「愛情の反対は無関心・・・と翻訳品質」に頂戴したコメントとの関連です。
向かわんと擬すれば即ち乖く。
本当に「頑張らない」のは、「頑張ること」を意識からなくすことだというくだりがありました。
これはまさに、そのとおりだろうと思います。
何かが頭の片隅にでもあるうちは、意識がそこに向いて、逆にできなくなってしまいがち。
その上、意識からなくそうとしている(=向かわんと擬する)うちは、到達できない(=即ち乖く)。
なくそうとするのではなく、なくなっている状態が理想なのですよね。
たとえば・・・・
記事の末尾に入れた画像は、今朝、自宅のベランダから撮影したものです。
カラーフィルターや色補正などの加工は一切せず、そのままです。
数本の光が桃色のカーテンさながらにのびて、本当に幻想的で美しい光景でした。
あまりに美しいので写真を撮りましたが、そのときの私は当然、この景色に意識が向いています。
でも普段は、太陽が昇ってくることを、いちいち意識していません。
ましてや、もしかしたら今日は北から日が昇るかもしれない・・・なんて、考えない(笑)。
「頑張ること」を意識からなくすというのは、そういう「完全に頭から外れた」「微塵も考えもしない」状態にすること。
私の場合は、自分を満たすことを優先して仕事を「ついで」にすることで、これに近い状態になりました。
寝食を忘れて没頭するという言葉がありますが、楽しいことに集中していると、他のことを忘れます。
あるいは、悩みにフォーカスしているうちは一向に解決しなかったのに、考えるのをやめたとたんに解決するということも、よくありますよね。
何かを完全に意識しない状態そのものは、誰でも、山のように経験しているはず。
にもかかわらず、「頑張ること」を意識からなくすのは、往々にして難しい・・・・
なぜ?
もしかしたら私たちは、子どもの頃から、「がんばれ」と言われすぎているのかもしれません。
手元の広辞苑で「頑張る」を引くと、次のように書かれていました。
([頑張る」は当て字。「我に張る」の転)
①我意を張り通す。②どこまでも忍耐して努力する。③ある場所を占めて動かない。
そう。
「忍耐して」「努力する」、なんですよね。頑張るって。
意識する・しないは別にして、「頑張らないといけない」と思っているときは、自分で自分に無理をさせているのと同じようなもの。
実際には忍耐というほど大げさなものではないにしても、多かれ少なかれ、本当は「やりたくないこと」に努力をする側面は否めないでしょう。
楽しくて自分から進んでやりたいことなら、多少大変でも頑張るという感覚は、あまり生じないでしょうし。
そして頑張ることが幼い頃からずっと、「当たり前に」なっている・・・・??
たぶん、だからなのだと思います。仕事を遊びの「ついで」にした結果、パフォーマンスがあがったのは。
「やりたくないこと」が「ワクワク」に変わっただけでも、ネガティブな要素は激減しますし。
もちろん、見直しそのものは、単調なことに違いはありません。
でも、できるだけ出かける頻度を増やすために、もう一工夫しました。
何をしたかというと、最後まで訳してから見直すというプロセス自体を、やめています。
具体的には、訳が途中でも「その日までに」終わっているところだけ、カフェで見直し。
つまり、訳す→見直す→訳す→見直す→訳す→見直す・・・と、細かく繰り返している、ということです。
そして最後に、原稿と照らさずに通しで読んで仕上げます。
悪天候だと1日ずっと家にいる日もあるとはいえ、基本的には、今日はどこに行こう?から始まりますし、そのおかげで、以前にも増して外に目が向くようになりました。
「頑張ること」を、意識からなくす----。
どこまでトコトン楽しめるか、良い意味でのチャレンジは続きます♪
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忙しいときほど遊ぶと・・・
「箱入り娘」という言い回しは、ある意味で日本語に特有のものらしく、インターネット上には「どう訳すか」「どう表現するか」について様々な意見が出ています。
文脈によってニュアンスが違うこともありますし、たしかに難しいですね。
でも今回は、特許明細書に登場する「箱入り娘」について。
そんなものが明細書に出てくるのかと思いきや、少ないながら出ています。
通常の意味での箱入り娘と、ゲームの名称としての箱入り娘です。
「Klotski」(または「箱入り娘」)という名称で知られているゲームは、15パズルの一変形形態と見なすことができる。このゲームは、長方形フレームからなり、そのフレーム内に、摺動させて動かすことができる正方形または長方形のタイルが配置されており、さらに、1つの空所がある。これらのタイルうち最大のものは正方形状であり、赤く塗られている(または何らかの他の方法で識別される)。 (特許第5389908号 3次元ブロックパズルタイプの論理ゲーム) |
こちらはゲームのほうで、フランスを優先権主張国とした国際出願の翻訳文です。
そこで、いくつかあるファミリのうち、国際出願(仏語)と米国出願から該当部分を抜粋します。
Le jeu connu sous le nom de « âne rouge » peut être considéré comme une variante du taquin. Il est constitué par un cadre rectangulaire dans lequel sont placées des tesselles carrées ou rectangulaires pouvant se déplacer par glissement, ainsi qu'un emplacement vide. La plus grande de ces tesselles a une forme carrée et est peinte en rouge (ou identifiée d'une autre manière). (WO2009150542) The game known by the name of "Klotski" can be considered to be a variant of the 15 puzzle. It consists of a rectangular frame in which square or rectangular tiles are placed, these tiles being able to be displaced by sliding, as well as an empty location. The largest of these tiles has a square shape and is painted red (or identified in some other way). (US8382112) |
例えば、家族構成が、男1人、女3人であり、平均年齢が”高”であり、最高年齢と最少年齢との差が”中”の場合には、娘は永遠の箱入り娘達であるような4人家族(名付けて、不行姉妹)であると考えられ、それに該当する家族パターンに分類される。 (特開2002-259656 コンサルティング支援方法及び支援装置 (株式会社トリプルエス)) また、ユーザが操作部12を操作して図14(b)に示すような文字(箱入り娘が)を撮像画像F1に対応して入力することで、端末10は撮像画像F1に対応付けた文字21を取得する。 (特許4203494 コンテンツ提供方法、コンテンツ提供システム、コンテンツ提供装置、及びコンピュータプログラム (個人の出願)) |
前回、特許明細書に登場する「箱入り娘」の話をしました。
訳し方の話でもないのに、なぜいきなり箱入り娘?と思った方もいるでしょう。
実は、公報検索システムを比較するのに都合がよい語だったので、前振りとして利用しました。
なくてもよいといえばよい、余談みたいなものですね。
今回が本題です。
業界の方ならご存知かと思いますが、Google Patentには種類があります。
http://www.google.co.jp/patents
上の2つで"箱入り娘"と検索しても何もヒットしないのに対し、3つ目で検索すれば、8件ヒット。
かたやJPlatPatの特許・実用新案テキスト検索で「公報全文」を検索すると、公開だけで4件、特許まで入れると7件ヒットします。
特許を入れると数が増えるのは、「同じ出願」で公開公報と特許公報の重複があるからですね。
実質、4件です。
一方、Googleのほうはヒットしている8件に、重複がありません。
特許庁のJPlatPatより、多くの公報を取得しています。
なぜ?
よく見ると、JPlatPatには出てこない番号には、Uのマークがついています。
そう。実用新案です。
JPlatPatのデフォルトでは「公開特許公報 (特開・特表(A)、再公表(A1))」だけを検索するようになっていますが、意図的に実用新案にチェックをつければ、同じように8件ヒットします。
かたやPatentscopeはどうかというと、Field Combinationで「Any field」を指定して箱入り娘を検索すると、4件ヒット。
こちらは実用新案が入ってきません。
翻訳者が実用新案を検索したいことはほとんどないでしょうから、入って「こない」ほうは特に問題ないと思います。
重要なのは、Googleだと「自動的に」実用新案が入ることのほう。
以前、「Googleの検索結果と「実在しない」コンテンツ」で、検索結果にはGoogle Translateの機械翻訳による特許明細書が混じっていることを示しました。
この機械翻訳は、実用新案にもかかっているようです。
実際、Google Patentでキーワードを "箱入り娘" ではなくローマ字で "Hakoiri musume" として、特許庁をJPだけに限定して検索すると、上の8件の機械翻訳バージョンが出てきました。
特許庁の限定を解除して、庁の指定なしでも結果は8件で同じです。
なんでもあり・・・ですね(笑)。
さて。
前回示したように、「箱入り娘」という語を含む出願には、国際出願があります。
そして英語のパテントファミリが存在します。
英語で列挙された8件の検索結果で、この国際出願には英語のパテントファミリの内容が表示されているかと思いきや、違いました。
昨日抜粋していた部分を比較したのが、下記です。
どうやらファミリとは関係なく、独自に日本語から機械翻訳しているようですね。
英語のパテントファミリ The game known by the name of "Klotski" can be considered to be a variant of the 15 puzzle. It consists of a rectangular frame in which square or rectangular tiles are placed, these tiles being able to be displaced by sliding, as well as an empty location. The largest of these tiles has a square shape and is painted red (or identified in some other way). (US8382112) GooglePatentの検索結果 The game can be regarded as a variant of the 15 puzzles that are known under the name "Klotski" (or "Hakoiri Musume"). The game consists of a rectangular frame, in the frame, square or rectangular tiles can be moved by sliding are arranged, furthermore, there is one cavity. These tiles among largest of which are square-shaped, (identified by or some other method) that is painted red. |
それでは、半角「Klotski」で検索すると、どうなるでしょうか。
Google Patentは、特許庁の指定をかけない状態で8件ヒット。
内訳は、以下のとおりです。
Grant CN202954598U
Grant CN202483371U
Grant CN201929544U
Grant CN204093012U
Grant US8382112B2
Application US20150367229A1
Application CN104739009A
Application CN103316484A
ここに、上記の日本公報機械翻訳バージョンは含まれません。和文公報も、なし。
代わりに国際出願のファミリになっているUS8382112が入ってきました。
そして他に米国の公開公報が1件、残りは中国です。
つまり和文公報の全角「Klotski」は、検索対象に「ならなかった」ということですね。
「Klotski」(または「箱入り娘」)という名称で知られているゲームは、15パズルの一変形形態と見なすことができる。このゲームは、長方形フレームからなり、そのフレーム内に、摺動させて動かすことができる正方形または長方形のタイルが配置されており、さらに、1つの空所がある。これらのタイルうち最大のものは正方形状であり、赤く塗られている(または何らかの他の方法で識別される)。 (特許第5389908号 3次元ブロックパズルタイプの論理ゲーム) |
同じことを、Patentscopeで試しました。
半角「Klotski」のヒット数は6件で、内訳は以下のとおりです。
US20150367229A1
CN104739009A
US20110084445
JP2011522653
KR1020110008275
CA2763449
上の2件はGoogleと一致し、3件目のUS20110084445はUS8382112B2の公開ですので、実質同じ。
JP、KR、CAは、いずれもWO2009150542のファミリです。
こちらは、半角検索でも、和文公報にある全角「Klotski」を拾ってきました。
件数だけでいえば、GoogleのほうがPatentscopeよりも多く取得しています。
でも、全角半角は区別されているように見えますね。
それならGoogleで全角検索したら、どうなるか? ・・・試しました。
"Klotski"
これでヒット「なし」となります。
以上、「箱入り娘」は、公報検索システムを比較する上で意外と便利なキーワードでした。
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前々から疑問に思っていたことのひとつに、ミネラルウォーターにはなぜ、「お湯」がないのか?ということがあります。
水は膨大な種類が出ているのに、なぜか「ホットウォーター」は、見たことがありません。
それが昨日、外出した際に自動販売機でホットの「いろはす」を発見。
やっと、ミネラルウォーターも「ホット」対応してくれたと喜んで飲んでみると、甘い・・・・・・。
純粋な水ではなく、糖類が加えられていました。
最近は、「常温」であれば、コンビニエンスストアなどでおいている店がときどきあります。
冷蔵庫に入れなければよいだけですし、店舗側もわりと簡単に対応できますよね。
でも、ホットになると、容器自体を変える必要があります。
ペットボトルならオレンジのキャップがついたもので、小売店が独自に対応するのは不可能でしょう。
メーカーが最初からホット対応で製造しないかぎり、「ホットウォーター」は、手に入らない。
私は基本的には外出時に小さな水筒に白湯を入れて持って出るのですが、荷物が多いと、水筒は家でお留守番(笑)。
白湯を購入できればよいのにと思ったことも、数限りなくあるわけです。
どうしても飲みたいときは、タリーズコーヒーやスターバックスなどのカフェにお願いするのですが、店員と顔なじみになっているいくつかの店以外は、正直かなり頼みにくいです。
紅茶と同じ値段でよいと言っても、料金を請求されたことがないですし。
水があれだけあるのに、なぜ??
個人的には、夏でも需要はそれなりにあるだろうと思っています。
たとえば、それでなくても荷物の多い、赤ちゃん連れの外出。
お湯を入れた水筒を持って出なくてよくなるだけでも、助かる人は多いでしょう。
百歩譲って夏は無理だとして、自動販売機にホットのエリアができる冬だけでも手に入れば嬉しいなと。
そして「いろはす」が、ここまで製品化したのなら・・・・・
製造元であるコカ・コーラのお客様相談センターに、純粋な水でホットの製品をリクエストしてみました。
実現するかどうかはわかりませんけれど、前々から欲しかったので。
叶うといいな・・・。
物質が光を通すことを示す、「透光性」。
この透光性を辞書で調べると、translucent という英訳語が出てくることが多いです。
そして文脈によっては正しい訳語で、そのまま使えます。
ただ、「透光性」が具体的に示す内容によっては、不適切な訳語になってしまうことも。
一例をあげると、特許庁発行の『意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き』に、次のような説明があります。
①「透明」とは、一般に、光が通過する物質の性質において、透過率が極めて高く、物質を通してその向こう側が透けて見える状態の性質を指しますが、「透明」という性質は物品の構成においては「材質」ということになります。 「透明」は「材質」であり、形状でも模様でも色彩でもありませんが、意匠法においては制定当初から、「透明」を意匠の構成要素として予定しており、「物品の全部または一部が透明である」とき、その旨を願書の【意匠の説明】の欄に記載しなければならないと規定しています(意 6 条 7 項)。 ②意匠出願において「透光性を有する」とは、「透明」と同様に光が透過する性質を有していますが、透過する光が拡散されるため、又は透過率が低いために、「透明」と違ってその材質を通して向こう側の形状等を明確に認識できない、又はまったく認識できない状態の性質を指します。磨りガラスや乳白色プラスティック等の材質の場合がそれに当たります。 そして、内部の光源などの光をその部分が透すことを説明しないと照明器具であることが理解できない等、材質の説明がないと物品が理解できない場合等には、「透光性を有する」旨を、願書の【意匠の説明】の欄に記載する必要があります。 『意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き』 p.68 |
この「透光性」は「透明(transparent)」を含まず、半透明(translucent)と不透明(opaque)を含みます。
加熱収縮性樹脂フィルムとしては、透光性(透明)のものを用いる。 特開2017-187561 上記透光性材料としては、アクリル系樹脂やシリコーン系樹脂、エポキシ樹脂のような透光性(透明)樹脂、ガラス材料を挙げることができる。 特開2016-012605 |
こちらは、「透光性(透明)」とありますね。
カッコの意味が「透光性(すなわち透明)」なのか「透光性(たとえば透明)」なのかはっきりしませんが、少なくとも透明なものが入るのは間違いないでしょう。
このように、「透光性」という語は、意外と幅広く使われています。
translucentだと断定できる場合を除いて、translucentとは訳しにくい例のほうが多いかもしれません。
だからといって、transparent, translucent and/or opaque と並べて訳すのも、良し悪しです。
こういうときは、「transparent to ~」という表現があります。
もう20年近く前だと思いますが、この言い回しに初めて出会ったときは、感動しました(笑)。
一例として、物理の教科書から一部を抜粋します。
Of course it is possible to have partial transmission, reflection, and absorption. We normally associate these properties with visible light, but they do apply to all electromagnetic waves. What is not obvious is that something that is transparent to light may be opaque at other frequencies. For example, ordinary glass is transparent to visible light but largely opaque to ultraviolet radiation. Human skin is opaque to visible light--we cannot see through people--but transparent to X-rays. College Physics Textbook Equity Edition Volume 2 of 3: p. 865 Oxygen and nitrogen, the two principal components of our atmosphere, are transparent to light and to most infrared (IR) and ultraviolet (UV) wavelengths. The Handy Physics Answer Book p.196 |
見た目が不透明(opaque)であっても、光を通すなら transparent to light。
見た目が透明(transparent)であっても、たとえば紫外線を通さなければ、opaque to UV。
酸素と窒素も、transparent to light and to most infrared (IR) and ultraviolet (UV) wavelengths.ですね。
翻訳者が特定の表現の使用頻度を調べたり、言語学の研究者が特定の言葉の使用例を確認したり。
この類の判断で根拠になることが多いものとして、Googleのヒット数があります。
もちろん、1ページ目に出てくるヒット数が全然あてにならないことは、わりと知られています。
Googleなら検索結果のページを1ページずつ繰るか、次の手順で最終ページまでダイレクトジャンプすることで、そこそこ実数を把握できました。
1.検索結果の下にあるGooooooooogleというところで、2ページ目に進みます。
2.ブラウザに表示されたURLの末尾を見てください。最後に、
&start=10
と書かれていると思います。
3.この10を990に直して、Enterキーを押します。
ところが最近は、こうした方法も、ほとんど機能しなくなってきています。
どう考えても検索結果の表示最大件数である990件より多そうな語でも、そこまでいく前にカットされたり、あるいは「ストップワード」が導入されたのではないかと思うようなヒット数になったり。
おそらく、データベースに蓄積されたコンテンツの量が、かなり増えてきているのでしょう。
Googleがそうだと断言するわけではないのですが、検索エンジンの開発・運営側では、「ヒット数は二の次」にしていることが多いと思います。
私もかつて「英日対訳 物質名データベース」や「国際特許分類の対訳検索」など、自宅のサーバー上でいくつかの全文検索エンジンを運営していたので、そうしたくなる気持ちは何となくわかります。
開発側として最も優先するのは、「いかに最適な結果を返すか」。
これが、最優先です。Googleでいえば、中身ですね。
いくらコンピューターの性能があがったからといって、膨大なインデックスを正確にカウントしようとすると、どうしても速度が犠牲になります。
瞬時に結果を返すには、どうしたところで、ある程度は概算値にせざるを得ないということです。
そしてそれは、たとえ巨人Googleといえども、同じではないかなと。
蓄積されるデータの量が多くなればなるほど、ヒット数を適当な「概算」にせざるを得ないとしても、少しも不思議はありません。
ヒット数のカウントも、きちんとしようとするとサーバーの負荷にもなりますし、しないですむならしたくないのが本音でしょう。たぶん。
・・・でも、よいと思うのです。それで。
検索エンジンは本来、最適なコンテンツを返すためのものであって、正確なヒット数を教えるものではないですし。
人々の検索の仕方を調査した結果によると、最初の1ページ目だけしか見ない人が相当数でいるらしく、いってせいぜい4~5ページ目まで。
ということは、検索エンジン側からしてみれば、10ページ以降なんて「どうでもいい(笑)」ようなもの。
ユーザーの私たちが勝手に、「数を知るための道具」として「も」使ってきただけ、なんですよね。
おそらく、Googleを表現の使用頻度の調査に使える時代は、そろそろ終わり。
以前からときどきコーパスを紹介していますが、少なくとも私たち翻訳者はそろそろ本格的にコーパスに移行してもよい頃なのかもしれません。
・小学館コーパスネットワーク (有料/無料)
・The Open American National Corpus
・The Corpus of Contemporary American English (COCA)
・The British National Corpus (BNC) ※COCAとインタフェースはそっくりですが別コーパス。
・コーパス開発センター (国立国語研究所など)
印刷物として発行される書籍には、多くの場合はページ番号が印刷されています。
何をいまさらというほど、あたりまえですよね。
先日、このページ番号に「読み仮名」を振るという発想に、出会いました。
厳密には、「仮名」ではないですね。「読み」でしょうか・・・。
『ロワイヤル仏和中辞典』です。
フランス語の数字の読み方はちょっと変わっていて、学習者は慣れるまで戸惑う人がほとんどのはず。
それを、ページ数の多い辞書が全部のページに印字しているのですから、画期的です。
上の例でいえば、deux=2、mille=1000、cent=100。
ここまでは、英語や日本語と似ています。
問題は、そのあと。
quatre=4、vingt=20、dix=10、sept=7。
フランス語はなぜか、「20が4つで80」という表現をするんすよね・・・。
ようするに2197は、2×1000+100+4×20+10+7。
編纂側としては、いちいちスペルを綴るのは、かなり面倒でしょう。
それをあえてしているわけで、とても粋な心づかいだと思った、ページ番号の読み方です。
もう何年も前になりますが、あるとき、ロシア語和訳の必要性が生じました。
当時、ロシア語は、完全に未知状態。
少なくとも文字には馴染みがあったフランス語やイタリア語とは異なり、アルファベットすらわかりません。
辞書を引こうにも、どのあたりに載っているのかすら、見当もつかないということです。
この状態から1週間で、ほぼ理解できたのですが、それはパソコンのおかげでした。
もちろん通常の語学学習と同じプロセスを踏んでいては、いつになったら読めるのか、わからない。
そこで・・・
語学学習の常識を捨ててみる→パソコンを使う前提で、工夫をしたのです。
日本で販売されているパソコンには、ローマ字またはひらがなで入力した文字を漢字に変換するための仕組みが搭載されています。
ATOKやMS-IMEに代表される、「かな漢字変換」システムです。
かな漢字変換システムでは、標準の変換辞書に加えて、新たな単語を登録できるようになっています。
まずはこれを使って、アルファベットも読めないロシア語の辞書を引きやすくしてみました。
具体的には、最初にアルファベットの大文字と小文字のデータを用意します。
私はインターネット上にあるものをコピーして使いましたが、ロシア語のキリル文字はWordの「記号と特殊文字」にも含まれるため、自分で入力してもよいでしょう。
そして文字の読み(発音)が書かれた資料を参考に、「1文字ずつ」単語登録します。
もちろん、仮名漢字変換に登録するという意味です。
たとえば、дに「でー」、яに「やー」といった具合ですね。
目的は辞書を引きやすくすることですから、必ずしも厳密に発音どおりでなくても構いません。
「トビョールドゥィ・ズナーク」と読む「ъ」を、「どびょーる」と登録してもOKです。
全部の文字を登録したら、次はアルファベットと読みが縦に並んだ一覧を作り、それを頼りにロシア語の文章を「写本」します。
つまり、紙の上の原文を見ながら、同じ文章をパソコン上で入力していくわけです。
一覧は横ではなく縦だということが、重要です。
いうまでもなく、この時点でも「単語の」発音はわかりません。
意味も、わかりません。
純粋に、文字を追いかけているだけです。
たとえばロシア語で3月を示す単語「март」は「マールト」と発音しますが、これを「エム・アー・エル・テー」と入力します。
はじめのうちは1文字ずつ一覧で確認しながらだったのに、1時間もすると、よく出てくる文字は自然に読みを覚えました。
加えて「写本」の際にアルファベットと読みが縦に並んだ一覧を使っていますので、入力しているうちに、文字の並び順も覚えます。
これで、辞書が引けるようになりました。
記憶力の高い人であれば、わざわざ入力しなくても1時間くらいあれば文字の並びや音などは覚えられるのかもしれません。
でも、私には到底そんなことはできそうになく、他の方法を考えました。
文字すら知らない未知言語を読解するにあたって、「できない」と思ってしまったら、その時点でできないことが確定します。
でも、どうすればできるかと考えれば、道は意外とあるものなのですよね。
ロシア語では、このあともコンピューターに大いに働いてもらい、無事に和訳ができました。
最後まで解決できなかった疑問は、専門図書館の職員に手伝ってもらったため、100%自力解決ではないのですが。
とにかく、「どうすればできるか」という視点は、不可能を可能にしてくれると思っています。
自宅のある場所のすぐ裏から、多摩湖まで約20kmの緑道が走っています。
通称「多摩湖自転車道」、正式名称は「東京都道253号保谷狭山自然公園自転車道線」だそうです。
自転車歩行者専用道路で、車やバイクは立ち入り禁止。
お天気の良い日には、たくさんの人たちが散歩やジョギングを楽しんでいます。
その緑道で紅葉の写真を撮りながら、ふと思いました。
桜は花見、月は月見。でも、紅葉はなぜか「もみじ狩り」。
もみじ狩りを英訳するとしたら、どうなるか。
この言葉が使われている特許明細書は、ある?と。
ほぼ、職業病です(笑)。
JPlatPatで検索してみると、さすがに請求項には登場しないようです。
でも明細書の本文には、公開限定で仮名表記の「もみじ狩り」が1件、漢字の「紅葉狩り」が17件。
どれも単なる例にすぎず、厳密な翻訳が求められる文脈ではないのですが、1件だけ英文ファミリが存在していましたので、参照してみました。
キャノンの出願で、特開2005-150841号。
『「秋」の画像領域に対して「紅葉狩りに...」の音声が、「冬」の画像領域に対して「Winter is a...」の音声がそれぞれ対応付けられる。』という文にあり、英語は
viewing colored leaves . . .
となっています。
それでは海外メディアは、どう書いているのでしょうか。
探してみました。
Imperial Palace opens Inui Street to public for autumn foliage viewing 2017年12月3日『The Japan Times』 |
他にもいろいろありましたが、総じていえば foliage が使われている例が多い印象でした。
leavesでもfoliageでも、通じる通じないでいえば通じるでしょう。
ただ、サクラの木の真下で楽しむお花見と違って、紅葉狩りは遠景での鑑賞もよくあります。
そこまで考えると、総称的なfoliageのほうが、感覚的には近いのかもしれませんね。
香粧品、特に調香の分野では、英語のextractに対応する「抽出物」「エキストラクト」「エキス」の意味が異なる場合があるようです。
これに端を発して、知り合いの特許技術者との間で、「エキス」の話題に。
そして、「エキス」は意味が一義に定まらないため明細書では定義なしには使えない、少なくとも翻訳で使っても何もよいことがないと教わりました。
たしかに、分野を問わず、「エキス」という語は非常に曖昧です。
国語辞典や百科事典はもとより、専門辞書でも複数の定義が存在していますから、裁判で「何をどこまで含むのか」という争いにでもなろうものなら、泥沼化しかねません。
翻訳上は、たとえば「抽出物」としておくほうが、よほど問題にならずにすむようです。
さて。
この「エキス」という語については、オランダ語の略だという説があちこちに書かれていました。
たとえば、三省堂の『大辞林』が次のように説明しています。
〔エキストラクト(オランダ extract)の略〕 ①薬効のある植物・動物などの有効成分を抽出して,濃い液体や粉末にしたもの。 「梅肉-」 ② 物事のいちばん重要な部分。本質。精髄。粋。生粋。エッセンス。 「慾といふものはね,人間を蒸餾して取つた-だよ/其面影 四迷」 〔「越幾斯」とも当てた〕 |
ここに、越幾斯という漢字がありますね。
国会図書館デジタルコレクションで「越幾斯」を検索すると、最も古い1870年の『袖珍薬説』以下、薬物に関する資料ばかりです。
1900年代に入ると香粧品にも見られますが、最初は医薬分野で使われるようになったのでしょう。
そのことに照らしても、オランダ語由来というのは何となくわかります。
もうひとつ、平凡社の『大辭典 第3巻』から旧字を現代漢字に直して引用します。
エキス 越幾斯 精の字をも当つ。徳川時代に和蘭薬局方の術語の入りし外来語で、蘭語のextractの略称。生薬又は食品の溶解すべき主成分を水・エーテル・酒精類にて抽出し、これを適当の稠度に蒸発濃縮せし、液状或は弧形状の物質。 (p.468) |
小学館の『日本国語大辞典 第2巻』によると、1833年刊の『植学啓原』に「越幾斯」が登場するとか。
実物を確認してみたところ、巻三に「越幾斯答刺屈多分」という見出しがついた章があり、冒頭は「越幾斯剤之首分也」となっていました。
越幾斯答刺屈多は、おそらく「エキストラクト」に対する当て字でしょう。
もう少し遡ってみたところ、『遠西醫方名物考 巻四』にも「蒲公英越幾斯」が出ています。
(PDFの2/31 一番左)
さらに遡ります。すると・・・・
宇田川玄真(榛斎)が複数の書物を翻訳してまとめた稿本に、養子である榕菴が校訂を加えて刊行したとされる『和蘭薬鏡』に、非常に興味深い記述を見つけました。
1820年の『和蘭薬鏡 巻1』のPDF 12/29です。
和蘭ノ方書ニ載ル製剤ノ名其冗長ヲ省テ約略スル者多シ假令バ丁幾去爾[ティンキテゥル]ヲ丁幾トシ越幾斯託刺窟多[エキスタラクト]ヲ越幾斯託トシ・・・
オランダの書物に記載された製剤名が長いため省略する人が多い、と。
こういう理由で、「越幾斯」になったのですね。
他には、1969年刊行の『薬史学雑誌』p.44 「洋方エキス小史」に、「皇漢医方では古くから本剤を膏といい生薬の煎熱によって製していた。洋方としては宇田川椀園訳の製煉術(天明頃)に記されているのが最初である」とあります。
この「洋方エキス小史」には、当時のエキスの定義や製法もあげられていました。
『製煉術』の現物は確認できていないのですが、いずれにしろ「エキス」は医師でもあった蘭学者たちが使い始めた言葉のようです。
それが時代を下るにつれて、少しずつ意味の幅が広がっていったのでしょう。
こうした背景に鑑みても、少なくとも特許では、extractの訳に「エキス」は使いにくいですね。
本当に、実務現場にいる特許技術者や弁理士から学ぶことや考えさせられることは、つきません。
ありがとうございました。
特許公報での調べ物をしている過程で偶然、「からなるグループから採択した材料を含む」という表現を含む請求項に出会いました。
翻訳による出願です。
言うまでもなくマーカッシュクレームなのですが、驚いたのは「採択」という表現が使われていること。
権利化されていますから審査過程では問題にならなかったのだろうとは思いますが、請求項に採択は、なじまないのも事実です。
それで試しに公報を検索してみたところ・・・・・。
方法クレームで、請求項に「採択するステップ」を含む出願が、いくつか実在しています。
翻訳案件の場合、原文はacceptだったり、adoptだったり。
acceptに「選ぶ」意味はないため、こちらは訳語そのものに問題ありの可能性があるのに対し、adpotは、choose以外に「to take by choice」という意味にもなり得るのは事実です。
ですので、どの出願も問題だと断言しているわけではありません。
ただ、英文の方法クレームでは通常、1つの動詞で表現される工程は1つです。
かたや採択は、複数のものから何かを(1)選択し、それを(2)採用すること。
たとえば条約の採択なら、諸外国から出された案のうち良いものを選び、条約としてまとめますよね。
最近は「決議を採択」といった使い方もなされているため「選び取る」意味が弱いこともありますが、少なくとも言葉としては、選ぶ+取り入れることを示します。
つまり、請求項の「採択するステップ」は、原文とは意味が違う可能性があるということです。
そして似たようなことは、実は「determine」で頻発しています。
特に、ソフトウェア関係に多いです。
「a step of determining~」という原文に、「~を判定するステップ」と翻訳しているケースです。
英語のdetermineは「決める」だけなのに、「判定」という語は、「判断」して「決定」することを意味します。
つまり、原文の1工程から、2工程だという解釈を許す訳に変えてしまっているわけです。
この場合、たとえば判断をまったく別のところで行って決めるだけの場合が、権利範囲に含まれなくなる可能性があるでしょう。
もとの原文は、決めているだけなのに。
判定=判断+決定以外にも、選定=選択+決定など、似たような語はいくつもあります。
方法クレームを外国語から日本語に翻訳するときは、原文の1工程が翻訳で2工程になってしまわないように、十分な注意が必要ですね。